最近では中国製の鉄瓶も多く見かけます。一概に中国製の鉄瓶が粗悪品とは言えませんが、鉄瓶は日本の茶文化の道具ですので、どうしても紛い物といった感は拭えませんし、やはり日本の熟練した職人の技術と比べれば見劣りする部分が多々あり、美術品としての価値があるとも言い難いです。
また、なによりも口にするものですので、素材である鉄や塗料の安全性について不安があるのが正直なところです。
では、日本製と中国製の鉄瓶はどう見分ければいいのでしょう?いくつかポイントを挙げてみたいと思います。
趣(デザイン)の違い
まず、国民性の違いからか、日本製の鉄瓶は趣のある落ち着いた感じの造りの物が多いですが、中国製の鉄瓶は派手な傾向にあるように感じます。(※中国人の好みにあわせて作られた日本製の鉄瓶もありますので一概には言えませんが。)また、下記のような細かい部分で違いが見受けられます。
色味
鉄瓶の着色は色を塗るのではなく、漆やおはぐろを丁寧に掃きあげて焼き付けます。なので金属が持つ本来の色合いが生かされた味わい深い色味が出るのです。それに対して中国製の鉄瓶の色はベタっとした印象で深みが感じられません。
象嵌
象嵌(金や銀等で装飾された模様)に繊細さが感じられず、ごてごてした感じの仕上りのものが多く見受けられます。また、金や銀の色をしていますが、本物の金や銀ではなく正式には象嵌と呼べるものではありません。
弦や蓋
鉄瓶本体は比較的模倣しやすいのですが、美術性の高い関西系の鉄瓶で主に多く使用される、銅製の弦や蓋は熟練された職人の技術が必要な為、違いがはっきり見て取れます。日本製の鉄瓶の弦や蓋が精巧に作られているのに対し、中国製は安っぽい作りをしています。
これらに関しては、普段より鉄瓶に見慣れていれば一目見てわかるのですが、普段、あまり鉄瓶に接しない方には見分けづらいかもしれません。そこで分かりやすい目安として価格の違いや生産地表記の有無で見分ける方法があります。
価格の違い
鉄瓶の価格もピンからキリまでありますが、1万円以下や2~3万円程の鉄瓶は中国製の可能性が高いと思います。(※象嵌の入ったものや、関西系鉄瓶のように凝った造りの物について。)南部鉄瓶やシンプルな形の鉄瓶、量産型の鉄瓶等はこの価格帯でも日本製のものがあります。
※また、1万以下のものには一見鉄瓶のように見えますが、鉄急須の場合があるので注意が必要です。よく見れば急須と書かれている場合もありますが、販売者自体がよく理解しておらず(あるいは分かった上で)、急須なのに鉄瓶と表記されているものも見かけたりします。
そのそも職人が一つ一つ手作りで作り上げた鉄瓶がそんなに安価に出来るわけがありません。ましてや、金や銀で装飾を施されたものが1~3万円で販売できるわけがないのです。材料費と加工費だけでも優にそれくらいはかかってしまいます。
生産地表記の有無
日本製の鉄瓶には大抵、日本製の表記や生産地の表記がされています。明記されていない物は中国製の可能性があります。※中には日本製と偽った表記の中国製の鉄瓶もあるかもしれないので注意が必要です。
※また、おかしな話ではありますが、中国で「南部鉄器」という商標登録が取得されている為、「南部鉄器」という表記があったとしても必ずしも日本製である確証はありませんので注意が必要です。
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