鉄瓶について徹底解説!

鉄瓶とは

鉄瓶とは湯を沸かす鋳鉄製の器具です。茶釜から発展したもので、注口(つぎくち)と弦(つる)がついています。丸形、筒形、平丸形などの形があり、胴には霰(あられ)や文様などの装飾が施された物もあります。

豆知識:鉄瓶には裏表があり、表は注ぎ口を右側にしたときの面になります。これは、鉄瓶を右手で持って湯を注ぐ際、右側が向かい合った客人から見られる面となるからです。このことから、表面を中心に絵柄や文字などの文様が施され、裏面はシンプルな形の場合が多いです。

鉄瓶の生産地

鉄瓶というと「南部鉄瓶」が有名ですが、鉄瓶は南部(岩手県)以外でも山形県(山形鉄瓶)、栃木県(天明鉄瓶)、東京都(江戸鉄瓶)、富山県(高岡鉄瓶)、三重県(桑名鉄瓶)、大阪府・京都府(関西鉄瓶・京鉄瓶)等々、日本各地で作られており、産地それぞれの特徴や歴史があります。

南部鉄瓶(岩手県)

【南部鉄瓶の特徴】
伝統的で高度な鋳鉄と技術が使われており、無骨な鉄肌と飾り気のない作風が特徴です。

【南部鋳物の歴史】
江戸時代に茶道に通じていた第28代南部藩主の南部重直が、自藩から良質の鉄が産出するのに着目し、京都の釜師、初代小泉仁左衛門を招いて茶釜を造らせたのが南部鉄器の起源といわれています。3代目仁左衛門の考案によって、現在のような形状の南部鉄瓶が造られるようになり、明治41年、皇太子(後の大正天皇)が盛岡を訪問した際に、8代目小泉仁左衛門の南部鉄器製作を褒め称えたことが全国に報道され、それが南部鉄瓶が広く知られる事となるきっかけになったといわれています。

山形鉄瓶(山形県)

【山形鉄瓶の特徴】
茶の湯がもつ素朴さがあり、薄肉で繊細な肌合いが特徴です。

【山形鋳物の歴史】
平安時代に源頼義と共に従軍した鋳物師が、山形市内を流れる馬見ヶ崎川付近の土質が鋳物に適している事を発見し、この地に留まり鋳物造りを始めた事が発祥とされています。江戸時代に入ると、山形城主の最上義光が火を扱う鍛治町と銅町を設置し、日用品や仏像が作られるようになります。江戸中期には梵鐘・燈篭等の大きな鋳物を造る技術も確立し、やがて、鉄瓶や湯釜などの美術工芸品も作られるようになります。特に湯釜は現在でも国内トップクラスのシェアを誇っています。

天明鉄瓶(栃木県)

【天明鉄瓶の特徴】
全体的に簡素な趣があり、詫びた肌合いに素朴で力強い造形が特徴です。

【天明鋳物の歴史】
天明鋳物は、平安時代に唐沢城主の藤原秀郷が武具等を製作させる為、5人の鋳物師をその地に移り住まわせた事が始まりといわれています。平安時代後期には湯釜が作られ始め、茶の湯が広まった安土桃山時代には天明釜として人気を博し、茶人として知られる千利休が、天明釜で一会を催した旨の文献も残されています。

江戸鉄瓶(東京都)

【江戸鉄瓶の特徴】
薄肉で鋳肌が美しく、わびさびのある柔らかなフォルムが特徴です。

【江戸鋳物の歴史】
安土桃山時代、徳川家康は江戸を軍事力・経済力のある城下町にする為、大工、左官、鍛冶屋、鋳物師など一流の職人達を江戸に呼び寄せたと言われており、これが江戸鋳物の始まりとされています。

高岡鉄瓶(富山県)

【高岡鉄瓶の特徴】
蝋型鋳造による精度の高い複雑な造形や風合い、継ぎ目のない綺麗な鋳肌が特長です。

【高岡鋳物の歴史】
安土桃山時代に加賀藩主前田利長が産業政策として鋳物工場を開設したのが始まりで、明治時代の頃になると制作の中心が日用品から美術工芸品へと移行し、繊細で華美な細工が施された工芸品は世界各国の博覧会で多くの賞を受賞し称賛を浴びる事となります。

桑名鉄瓶(三重県)

【桑名鉄瓶の特徴】
実用的でシンプルで飽きのこない形状が特徴です。

【桑名鋳物の歴史】
安土桃山時代、桑名藩の藩主となった本多忠勝が鉄砲の製造をしたのが始まりと言われています。鉄砲の他に灯ろう、梵鐘、農具や鍋などが作られ、近辺で発見された砂が鋳造に適していた事から、桑名鋳物が躍進する大きな原動力となりました。

京鉄瓶(大阪府、京都府)

【京鉄瓶(関西鉄瓶)の特徴】
関西方面(京都、大阪、滋賀)で作られた鉄瓶で、造りが繊細で、象嵌等の装飾が施された物が多く、京文化の特性が反映されています。

【京鉄瓶(関西鉄瓶)の歴史】
江戸時代、高名な龍文堂の初代四方龍文が京都で蝋型鋳造によって鉄瓶を造る事を創案しました。この事により複雑な形状の鋳物製作が可能となり、流麗で柔和な風合を持った鉄瓶が造られるようになりました。二代目の門人には近江の亀文堂、京都の秦蔵六らがあり、それぞれが名だたる名品を残しています。 大阪は京都と並んで多くの釜師が鉄瓶を造っていますが、中でも明治・大正時代に活躍した大国栢斎は名工として名声を博しました。

京鉄瓶(関西鉄瓶)の著名な工房

【龍文堂(りゅうぶんどう)】
龍文堂は江戸末期から昭和33年頃まで8代続いた京都の名家です。明治から大正に掛けて高級な鉄瓶を製作し、歴代が数々の名品を世に残していて、夏目漱石の著書「吾輩は猫である」にもその名が出てきます。初代四方龍文は蝋型鋳造による鉄瓶の製作を創案し、京鉄瓶の礎を築きました。二代目の門人には亀文堂、秦蔵六ら名だたる名工が名を連ねています。

【亀文堂(きぶんどう)】
亀文堂は幕末から昭和まで4代続いた鉄瓶の名門です。初代亀文堂(波多野正平)は1813年(文化10年)京都に生まれました。2代龍文堂安平に師事し蝋形鋳造の技術を学び、その後独立して近江・能登川に住み鉄瓶の製作に従事しました。山水浮き彫り模様の鉄瓶が好評を博し、亀文堂の名は広く世に知られるようになりました。さらに鉄瓶の胴や弦、摘みに銀象嵌を施した高級鉄瓶を製作し、亀文堂の名を不動のものとしました。

【大国栢斎(おおくにはくさい)】
明治・大正時代に活躍した大国栢斎(おおくにはくさい)は当代随一の名工として名声を博しました。明治22年頃から「大国造」の銘で鉄瓶を製作、42年以後湯釜を製作し大正13年パリ万国装飾美術展に出品し1等を受賞。子の大国藤兵衛、や大国寿郎も多くの名品を残しています。

【秦蔵六(はたぞうろく)】
幕末から続く名門で、初代秦蔵六は初代亀文堂(波多野正平)の弟。2代龍文堂の門下で鋳造の技術を学んだ後に独立。江戸期には孝明天皇の御印や将軍徳川慶喜の黄金印を鋳造し、明治に入ってからは明治天皇の御璽(ぎよじ)、国璽(こくじ)を鋳造し名声を上げました。

鉄瓶のパーツ説明

1【蓋】

南部鉄瓶は基本的に摘みと蓋が一体型で鉄で出来ています。関西鉄瓶は主に蓋が銅で作られていて、摘み、座などの組み合わせによって出来ています。

・摘み(つまみ)
蓋の持ち手の部分で、梅の形をした摘みが主流ですが、松の実や小槌、瓢箪などの様々な形をした摘みがあります。また「虫食い」という、ところどころ虫が食ったような穴のあいた装飾がされたものもあり、これは侘び寂びを表現しながら、熱を逃がすための工夫が施されたものです。関西鉄瓶の中には、摘みに銀や翡翠を使ったものもあります。

・座(ざ)
摘みの根元の部分で、草花などを象ったものや銀などで装飾されたものもあります。

2【肩(かた)】

肩は大きく分けて、肩の部分が丸みを帯びた丸肩(まるがた)、肩の部分が角ばった肩衝(かたつき)、肩の部分がなだらかに傾斜している撫肩(なでがた)等があります。

3【弦(つる)】

鉄瓶の取っ手の部分です。南部鉄瓶は主に鉄でできています。袋弦と無垢弦があって、袋弦は中が空洞になっていて、湯が沸騰しても弦の部分が熱くなりにくくなっています。関西鉄瓶には銅製の物があり、象眼等の装飾が施された物もあります。

4【環付(かんつき)】

弦の付け根部分で、弦と胴を繋いでいる部分です。このようなちょっとした所にも獣等の形を模した凝った造りの物もあります。

5【胴】

鉄瓶の胴体の部分です。関西鉄瓶には胴に様々な美しい紋様や装飾が施されたものがあります。

6【口】

注ぎ口の部分です。中には動物の姿を象った獣口といった物や、銀加工を施したものなどもあります。

鉄瓶の製造工程

鉄瓶が完成するまでには、細かく数えると50以上もの工程がありますが大まかな工程は次のような流れになります。※鋳造法の違いにより工程は異なります。

1.原型の製作
考えた図案をもとに木や石膏で原型を制作します。

2.型の作成
原型を元に鉄を流し込む型を制作します。

3.鋳造(ちゅうぞう)
鋳造とは溶解炉で溶かした鉄を鋳型(いがた)と呼ばれる型に流し込んで形を作る金工技法の一つです。鋳金(ちゅうきん)ともいい、出来上がったものは鋳物(いもの)と呼ばれます。地金の成分、その日の気温や湿度、また、流し込む速度などによって仕上がりが左右されるので、熟練された職人の技が必要となります。鋳造の種類は主に、蝋型(ろうがた)双型(そうがた)焼型(やきがた)生型(なまがた)に分けられます。

溶解炉
鋳造、仕上、着色、彫金など、様々な工程を経て製造される鉄瓶において、1番最初の形を作り出す工程である鋳造で重要な役割を果たすのが溶解炉です。溶解炉で固形の原材料(インゴット等)を融点以上に温度を上げて溶かすことによって初めて型に金属を流し込み、形を作ることが出来るようになります。

蝋型(ろうがた)鋳造
蝋で作った原型の周りを鋳砂や石膏で覆い固め、加熱により蝋を溶かし出し出来た空間に溶かした金属を流し込む技法です。手間と時間がかかりますが、もっとも精度が高い技法で、原型の複雑な造形や風合いを忠実に表現する事が出来ます。また、継ぎ目のないきれいな鋳物を作る事が出来るのも特徴で、美術品等の製作に適した技法です。関西鉄瓶(京鉄瓶系でよく用いられる鋳造法です。

双型(そうがた)鋳造
外型と、中子(なかご)の2つの型を組み合わせて出来る隙間に、溶かした金属を流し込む技法です。最も歴史のある鋳造技術の一つで、円筒型や円錐型の鋳造品(茶釜、火鉢、梵鐘)などの製作によく用いられます。

焼型(やきがた)鋳造
粘土質の土などで作った型を焼いて水分を取ったあと、溶かした金属を流し込む技法です。細かい所まできれいに仕上がりるのが特徴で、南部鉄瓶などはこの鋳造法で作られています。

生型(なまがた)鋳造
上下枠に原型を入れ砂を入れて押し固めます。原型を取り出すと砂の鋳型ができます。これに溶かした金属を流し込む技法です。コストが安く量産に向いた技法です。

4.仕上げ
型から取りだした鉄瓶を綺麗に整え、錆止め処理を行います。

5.バリ取り
型から取り出したばかりの鉄瓶にはバリ(余分な出っぱり等)がついているので磨き落として表面を綺麗に整えます。

6.金気止め(かなけどめ)
高温で鉄瓶を焼く事により酸化皮膜をはり鉄瓶を錆びにくくする技法です。

※豆知識:金気止めは明治時代に盛岡で大火災があり、鉄瓶の工房が焼けてしまった時に、焼け跡から出てきた鉄瓶や釜を使ってみたところ、錆が出なかった事から考案されたといわれています。

7.着色
古来よりの伝統技法を用いて、一つ一つ手間暇かけて色をつけています。表面に色を塗っているわけではありません。金属が持つ本来の色をいかす為、熱した鋳肌の表面に、漆やおはぐろと呼ばれる液を稈心箒(みごほうき)で掃きあげて焼き付けます。そうすることによって独特の奥深い色が表現できるのです。おはぐろの調合や掃き上げ加減が難しく高度な熟練の技が必要となります。

鉄漿(おはぐろ)・稈心箒(みごほうき)
着色時に使用する道具で、鉄漿は酢酸液に鉄片を漬け、茶汁を混ぜ合わせた物で、色の調整や錆び止めの効果があります。稈心箒は鉄漿を掃く際に使用され、藁の芯を束ねた物で出来ており、毛先は繊細な作業が出来るよう工夫されています。

8.彫金(ちょうきん)
仕上がった鉄瓶に装飾を加えます。彫金には彫り、象眼等の技法があり、いずれも熟練された技術が必要となります。

・彫り
鋳肌に鏨(たがね)で模様や図案、文字等を彫り込む技法です。

・象眼(ぞうがん)
象眼という言葉には、象(かたどる)眼(はめる)という意味があり、金属の表面を彫り、そこに他の金属をはめ込んで模様等を形作る技法です。線状に細工する事が多いですが、地金に布目状の筋を彫り、その上に薄板状の金や銀をかませ打ち込んで平面にする、布目象眼(ぬのめぞうがん)といった象眼技法もあります。

鏨(タガネ)
鉄瓶を装飾する彫金の際に使用します。タガネは市販されているカブと呼ばれる元となる棒状の素材を自分の使いやすいように加工して作ります。一言にタガネといっても、毛の様に細い線を彫る為の毛彫りタガネ、和筆風な線を彫る片切タガネ等々、刃先の種類や大きさで数十、数百種類にもなり、それらを状況によって使い分けながら華美な装飾を施します。

鉄瓶の歴史

鉄瓶は元々はやかんから派生したものと考えられています。やかんの元となったのは、注ぎ口と取っ手の付いた中国の生薬用の加熱器具「銚子(ちょうし)」といわれており、「やかん(薬缶)」という呼び方は、漢方薬を煎じる為に使用されていた「薬鑵(やくくわん)」が語源とされています。

やかんが湯沸かしとして使用されたのがいつの時代からなのかは不明ですが、江戸時代に発行された日葡辞書(日本語をポルトガル語で解説した辞典)によれば、中世末には既に湯を沸かす道具として用いられていたようです。

茶の湯釜に注ぎ口と弦を付けたものは鉄薬鑵(てつやかん)と称され、後に「薬鑵釜」や「手取り釜」と呼ばれるようになりますが、それが「鉄瓶」の起源と考えられています。16世紀(戦国時代)には茶道で使われています。手取釜は鉄瓶と似た形をしていますが、弦が細いといった形状から、当時は釣り釜として使われたものと思われます。手取釜の名称は室町時代末以後の茶会記に数多く見受けられ、この頃、天命(現在の栃木県佐野市)で盛んに鋳造されていた事が知られています。

鉄瓶という呼称が使われ始めたのは18世紀の末頃(江戸時代)と言われ、幕末から明治初年には一般的に使われたようです。その背景には中国より伝わった煎茶があり、それまで敷居の高かった茶道に対し、手軽にお茶を楽しめる文化として一般に鉄瓶が普及したと考えられています。

天明5年(1785)の「諸方誂物掟(しょかたあつらえものひかえ)」や文化13年(1816)の茶道書「茶道筌蹄(ちやどうせんてい)」に鉄瓶についての記述が残っています。明治16年(1785)の「都の魁(みやこのさきがけ)」には鉄瓶を造る業者として、龍文堂ほか数社が見受けられ、京都で盛んに鉄瓶が作られたことがうかがえます。

鉄瓶の使用方法

鉄瓶の使い始め(鉄瓶ならし)
新品の鉄瓶は「鉄瓶ならし」を行ってください。特に使い始めの1ヶ月が大事です。鉄瓶には酸化皮膜という皮膜がはられており、これが錆止めの役割を果たしています。この皮膜が剥がれない内に湯垢をつけてしまうのが鉄瓶を錆びにくくするポイントです。

最初に鉄瓶の中を軽くゆすぎ、お湯を沸かしてください。(※決してごしごし洗ったり、洗剤を使ったりしないでください。)お湯が沸いたら捨て、これをお湯の濁りが無くなるまで3回くらい繰り返します。

湯垢がつき鉄瓶の中が白っぽくなるには、使い始めの2~3週間は毎日使いたいところです。1ヶ月は頻繁に使わないと白っぽくはなりません。早く湯垢をつけるには、ろ過した水よりもカルシウムが多く含まれた、ミネラルウォーターや井戸水(特に硬水)を使用するのが効果的です。

軟水と硬水
水には軟水と硬水がありますが、違いは「硬度」の違いです。硬度というのはカルシウムやマグネシウムの含有量で、1Lあたり硬度120mg未満が軟水、120mg以上が硬水とされています。軟水と硬水にはそれぞれの特徴があります。

カルシウムやマグネシウムの濃度が低い軟水は、なめらかで口あたりがよく、さっぱりしているのが特徴です。日本の水はほとんどが軟水です。軟水は旨味成分が溶け出しやすい事から、素材本来の味と香りを引き出すには軟水が良いとされています。デメリットとしては、現代人が不足しがちと言われるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が、軟水では多く摂る事が出来ません。

カルシウムやマグネシウムの濃度が高い硬水は、口当たりが重く苦みを感じる場合があります。普段口にしている日本の水はほとんどが軟水ですので、慣れない硬水は体に合わない事もあるかもしれません。硬水のメリットとしては、現代人が不足しがちなミネラル分が多く摂取出来る事があげられ、健康や美容、ダイエット面でも注目されています。デメリットとしては、過剰摂取をしてしまうと胃腸が弱い人等は、お腹がゆるくなってしまう可能性があります。また、硬水には特有の苦味と香りがある為、料理の味付けの際に邪魔になる事があります。

※硬水は湯垢を付けるのには有効ですが、茶本来の旨み、渋み、苦味といった成分は抽出されにくいので、実際にお茶を入れる際には軟水の方がお勧めかもしれません。

湯垢とは
鉄瓶を使用していくと、鉄瓶の内側に白い沈殿物が付着し始めます。カビと勘違いされる方もいらっしゃいますが、決してゴシゴシ洗ったりしないでください。これは水中のカルシウムなどのミネラル成分が沈着したもので、「湯垢(ゆあか」と呼ばれています。垢というと聞こえは悪いですが、この湯垢こそがお湯をまろやかで美味しいものにしてくれる秘訣なのです。

鉄瓶を使い続ければ使い続けるほど湯垢は蓄積され、より美味しいお湯が沸かせるようになります。また湯垢が付着する事によって錆びにも強くなります。。

鉄瓶を使用の際の注意点
お湯を沸かす際には、8分目程度を目安に水を入れてください。目一杯に入れてしまうとお湯が沸いた際に吹きこぼれる恐れがありますのでご注意ください。また、蓋を少しずらして蒸気抜きをしてください。なるべく直火を避け、また、強火でのご使用はお控えください。

お湯が沸騰した際には鉄瓶本体はもちろん、蓋や弦も大変熱くなっていますので、十分お気をつけください。鉄瓶を持つ時やお湯を注ぐ際には、布巾などで押さえてご使用ください。(※一般的にIHをご使用の場合は弦は熱くなりません)

鉄瓶の熱源

鉄瓶の熱源には様々な物がありますが、どれが鉄瓶の熱源として最適なのか、注意点を含めご紹介させて頂きます。

火鉢(炭火)
古くから鉄瓶でお湯を沸かすのに使われてきた熱源で、道具を揃えたり、使用する際の注意点等も色々あるので大変ですが、鉄瓶でお湯を沸かすのに最も適した熱源の1つです。

電熱器(電気コンロ)
電熱器とは、内蔵されている電熱線を加熱する方式の調理器で、一般的に熱源の部分が渦巻きの形をしています。鉄瓶へのダメージが少なく、炭火のように手間もかからず、しかも安価で手に入るので個人的には1番お勧めの熱源です。

茶道でもよく使用されており、炭を模した形状の電熱器(電気炭)といった物もあります。この事からもいかに電熱器が鉄瓶の熱源として適しているかが伺えます。また、IH器具では使用できないものにも幅広く使用できるといった利点もあります。

ガスコンロ
ガスコンロでも使用する事が出来ますが、使用の際は強火を避け中火以下、(出来れば弱火)でご使用ください。もともと鉄瓶は直火に弱いものなので、強火で使用すると鉄瓶の底が焼けてしまい、変色や錆びの原因になってしまう恐れがあります。また、ガスの中には水分が含まれている為、その事も含め使用には注意が必要です。

IH調理機
ほとんどの鉄瓶はIHでの使用が可能ですが、材質や形状(底の面積が狭い(直径が12cm以下)、底が平らではない、薄いなど)によっては、IHが使用できない場合がありますのでご注意ください。心配な場合は購入前に確認される事をお勧めします。また、IHは20000回/毎秒以上もの磁場振動を発生していますが、フライパン等と違って出来るだけ薄く作られている鉄瓶は、この微振動で大きなダメージを受ける可能性があるので、IHを利用の際は弱火でのお使用をお勧めします。

鉄瓶のお手入れ方法

使用後のお手入れ
鉄瓶は水分で錆びやすく、また、沸騰したお湯の温度が下がっていく時が一番発生しやすいので、使用後のお手入れがとても肝心となってきます。

お湯や水を入れたまま放置するのは厳禁です。使用後は鉄瓶が熱いうちに中のお湯を捨てるかポットなどに移して空にして余熱で乾かします。水分が残っていると錆の原因となるのでしっかり乾かしてください。(鉄瓶のふちや注ぎ口、蓋の裏などにもお湯が残りやすいのでご注意ください。)

水分が残ってしまった場合でも空焚きで乾かすことは出来れば避けてください。空焚きをしすぎると、内部の錆び止め(酸化皮膜)や外側の着色が剥がれ、鉄瓶を傷めてしまいます。余熱で水分が除ききれない場合はドライヤー等を使用して乾燥させるといった方法もお勧めです。保管する際は、湿気のない風通しのいい所に保管してください。
※シンクの下などは湿気が多いので避けてください。

鉄瓶の外側のお手入れ
鉄瓶の外側を拭く場合は乾いた布を使用してください。また、鉄瓶が熱いうちに、煎茶を浸し絞った布で表面を軽く叩くように拭くと光沢や風合いが出てきます。錆が出ている場合は錆止めにもなります。
※鉄瓶が冷えている時にやると逆に錆びる原因になるのでご注意ください。

鉄瓶のメリット

伝統美あふれる形状
鉄瓶のメリットは色々ありますが、まず第一にその圧倒的な存在感が挙げられます。歴史を感じさせる伝統美、重厚感と繊細さを併せ持ったそのフォルムは、現代の湯沸かし器にはない、何とも言えない趣があります。

育てる楽しみ
鉄瓶は使い続ければ続ける程、味わいが出てきますし使い勝手も良くなります。また、鉄で出来ている鉄瓶は頑丈で壊れにくく、使用方法さえ間違わなければ一生お使いになる事ができます。

お湯がまろやかで美味しく
鉄瓶はカルキ(塩素)除去能力がとても高く、水道水でも驚くほどまろやかで美味しくなります。カルキはただ水を沸騰させれば消えると思われがちですが、湯沸かしの材質や使用方法によって塩素の減り具合に大きな差があり、状況によっては逆に塩素濃度が高くなってしまう場合もあるといわれています。お茶やコーヒー等の飲み物や料理は、全て水の良し悪しで味が変わってくるので、鉄瓶1つあれば快適な食生活を送る事が出来ます。

鉄分補給
鉄瓶は鉄分の補給にも大変適しており、その効能は科学的にも証明されています。人は1日に10mg~15mg程の鉄分が必要といわれており、鉄分が不足すると貧血などの症状が表れます。ですが、現代人は鉄分の補給不足で、特に女性は4人に1人が貧血症、また2人に1人が貧血予備軍だといわれています。

鉄分には三価鉄とニ価鉄の2種類があり、吸収率に大きな差があります。鉄分の補給というと、ほうれん草やひじき等が頭に浮かびますが、実はこれらに含まれる鉄分は吸収率の低い三価鉄です。ビタミンCを含む食品と一緒に摂取することで二価鉄に還元され吸収されやすくなりますが、食事で毎日一定量の鉄分を補給するのはいずれにせよ大変です。鉄瓶から溶け出す鉄分は吸収率の高いニ価鉄なので、鉄瓶で沸かした白湯やお茶、コーヒーを飲めば、手軽に鉄分を摂取することができます。(ニ価鉄は三価鉄の5倍以上もの吸収率があると言われています。)

鉄瓶で作った白湯で健康&ダイエット
近年、健康や美容に良いとされ注目を浴びている「白湯(さゆ)」のメリット、作り方、なぜ白湯作りに鉄瓶が適しているのかについて紹介させて頂きます。

白湯を飲むことにより体が温まり血流がよくなります。その事により代謝と免疫力が高まります。体温が1度上がると代謝が10%、免疫力が30%程アップするともいわれています。

・血流促進(冷え性、肩こり等の改善)
血流がよくなる事により、冷え性や肩こり等の改善が見込めます

・内臓機能が向上(デトックス効果)
内臓が活発に働き始め、消化作用が促進される事で体内の老廃物が排出されやすくなり、便秘の改善やデトックス効果が期待できます。

・脂肪の燃焼率がアップ(ダイエット効果)
基礎代謝が向上する事により脂肪が燃焼されやすくなり、また、太りにくい体質への改善にも繋がります。

・余分な水分を排出(むくみ等の改善)
血液やリンパの流れが良くなり、体内の余分な水分を排出してくれるので、むくみ等の解消にも効果が期待できます。

白湯の作り方と飲み方
1.鉄瓶に水を入れ火にかけます
※水道水でOKです。
※水の量は7~8分目程度を目安にしてください。蒸発して量が減っていく為、多めの水量がいいですが、目一杯に入れてしまうとお湯が沸いた際に吹きこぼれる恐れがあるのでご注意ください。

2.沸騰したら蓋を取り10~15分ほど沸かし続けます

3・沸かし終わったら火を止め、お湯を器に移し50℃くらいまで冷めるのを待ちます
※早く冷ます為に氷などを入れたりしないでください。

4.適温まで冷めたら、ゆっくりとすするように飲んでください
※10分程度時間をかけて飲むのが効果的です。
※残った白湯は保温ポットなどに入れておくのがお勧めです。

白湯を飲むタイミングについては「朝の寝起き」が最もお勧めです。目覚めの白湯は寝ている間に冷えた内臓を温め、1日の始まりから体調を整えてくれます。あとは、お昼や夜の食事中にも1杯の白湯を飲む事をお勧めします。

また、白湯は一日800ml程度を目安に飲むと良いとされています。体にいいと言っても飲みすぎてしまうと逆に、胃に過度の刺激を与え腹痛の要因になったり、むくみが発生する事もあるようなのでご注意ください。

なぜ白湯作りに鉄瓶が適しているのか?
白湯を作る際に、沸騰してから10分~15分沸かし続けるという工程がありますが、それは水道水の中の塩素(カルキ)の臭いや味、有害物質(トリハロメタン)を取り除く為です。電気ケトル等はお湯の吹きこぼれ防止の為、沸騰したら自動で止まる機能が付いているので、沸騰させ続けることが出来ません。

やかんや鍋などでも沸騰は可能ですが、鉄瓶は塩素除去能力がとても高く、また、鉄分の補給も同時に出来る為、最も白湯作りに適しているといえます。

鉄瓶のデメリット

丈夫、美味しいお湯が沸かせる、鉄分が補給できる等、良いこと尽くめの鉄瓶ですが、デメリットもありますので注意点を挙げさせて頂きます。

錆び
まず、1番気になる点は「錆び」についてだと思います。使用後に水分をしっかりと乾かし、空焚き等に気を付ければ極端に錆びるといった事はないのですが、電気ケトル等に比べればどうしてもお手入れの手間は必要です。

重さ
元々鉄で出来ている為に重い鉄瓶ですが、水を入れる事により、さらに重くなるので注意が必要です。

熱くなる
お湯を沸かした際に鉄瓶が大変熱くなりますのでお気をつけください。鉄瓶を持つ時やお湯を注ぐ際には、布巾などで押さえてご使用ください。

価格
一生使っていけるような鉄瓶になると、それなりに値が張ります。安すぎる鉄瓶の中には日本国外で作られた鉄瓶等もありますのでご注意ください。

鉄瓶の選び方

一言に鉄瓶といっても様々な種類があり、日常的に使用するのに適した鉄瓶、造形の美しさを求める鉄瓶、茶道用の鉄瓶、コレクションとして手元に置きたい鉄瓶、等々目的に合わせて選ぶ必要があります。価格帯も一万円前後から何十万、何百万とするものまでピンからキリまであります。

安い物は機械で量産されたものや日本国外で作られたものがあり、材質的にもあまり良い物が使われていない事が多いです。ちゃんとした原材料でまともな職人が造った鉄瓶で1万円前後のものはありえません。これらの事から、あまりにも安価な鉄瓶では、鉄瓶の本来の魅力を堪能することは難しいといえます。

あくまでも目安ですが、鉄瓶本来の魅力を堪能できるものとなると、最低でも3~5万円以上の物は欲しいところです。一生使っていける価値のある物を求めるとなると10万円くらいは見ておいた方がいいかもしれません。高いと思われるかもしれませんが、職人が幾多もの工程を一つ一つ手作りで造り上げる事を考えると、どうしてもこのくらいはかかってしまいます。このクラスになると本格的で、一生ものとして大切に育てていく価値がある鉄瓶といえます。

20万以上の鉄瓶になると、複雑な造形や、金や銀などで美しい細工が施されたものが多く、飾っておくだけでも華があり美術的価値も高くなります。

価格の違い
鉄瓶は、製作者、鋳造法、デザイン、装飾、材質、産地、手作り品か量産品か等、様々な要因によって価格は異なり、当たり前ではありますが、基本的には価格が高いほど高級な商品といえます。

製作者の違い(ブランド性)
一概には言えませんが、ファッション等のブランド品と同じように、名の通った作者の作品はネームバリューにより、無名のものより高額の傾向にあります。

鋳造法の違い
鋳造とは熱で溶かした金属を型に流し込み形を作る技法の事で、様々な鋳造法と特長があり、鋳造法によってコストが異なるのでそれにともない価格も変わってきます。

デザイン、装飾の違い
凝ったデザインや彫金等の装飾が施されたものは、それにかかる労力、技術力、材料費等によって価格が高くなります。

材質の違い
鉄瓶の中には原材料に砂鉄が使用されたものがあり、砂鉄で出来た鉄瓶は通常の鉄瓶より高価になります。

産地の違い
鉄瓶には中国等で作られたものもありますが、日本製の鉄瓶の方が高価です。また、日本国内でも製造法、鉄瓶の性質の違い等から産地によって価格が異なります。

手作り品と量産品との違い
当然ではありますが、職人が一つ一つ時間と労力をかけて作り上げた手作りの鉄瓶と量産された鉄瓶とでは価格が全然違います。

その他、骨董鉄瓶の場合は商品の状態や希少性によっては数十倍もの価格差が生じる場合もあります。

お勧めの鉄瓶紹介

鉄瓶と鉄急須の違い

見た目は鉄瓶のように見えますが、鉄急須というものがあるので注意が必要です。よく見れば急須と書かれている場合もありますが、販売者自体がよく理解しておらず(あるいは分かった上で)、急須なのに鉄瓶と表記されているものも見かけたりします。

鉄瓶と鉄製の急須は一見同じように見えますが全く性質が異なります。鉄瓶はお湯を沸かすのに使用するものですが、急須は沸かしたお湯を注ぎ、お茶を煎じるための道具なので直接火にかける事は出来ません。火にかけてしまうと破損の原因になってしまいます(※中には特殊加工を施した直火可能な急須もあるようです。)

また、鉄瓶は鉄分の補給が出来ますが、急須の大半はホーロー加工(錆びないように鉄の表面をガラス質でコーティングする加工)が施されており、鉄分の補給は望めません。

鉄瓶と鉄急須の見分け方

サイズの違い
1番単純な見分け方としてサイズの違い(鉄瓶は大きく急須は小さい)がありますが、小さな鉄瓶もある為、一見しただけでは区別がつきづらいので注意が必要です。

ホーロー加工が施されているかどうか
鉄瓶の内側は鈍い鉄色をしていますが、鉄急須の内側にはホーロー加工が施されているので、表面がツルツルしていて光沢があります。※ホーロー加工が施されておらず、直火可能な急須も存在します。

茶こしがついているかどうか
鉄瓶にはついていませんが、急須には中に茶こしがついたものが多いです。

価格の違い
急須はほとんどが大量生産されたものなので、鉄瓶と比較して価格は大分安くなります。

砂鉄鉄瓶

鉄瓶には原材料に鋳鉄ではなく主に砂鉄が使用された砂鉄鉄瓶があります。砂鉄は、古来、日本の製鉄の主原料でしたが、鉄鉱石に取って代わり、現在では全ての砂鉄鉱山が閉山しています。日本刀製造技術の伝統保持などの目的としてのみ、一部限定的に採掘されているだけで、新たに砂鉄を採掘する事はできません。

また、砂鉄を原料とした鉄瓶の制作には特殊な技術を要する為、取り扱える職人は限られており、手間や時間がかかる事からも、現在は僅かしか造られておらず、非常に貴重なものとなっています。砂鉄で出来た鉄瓶はとても硬いのが特徴で、叩くと「チーン」と澄んだ音色が響きます。錆びにくく、また、錆が内部に浸潤しにくいので、お手入れさえきちんとすれば非常に長持ちします。

※注意点
砂鉄の鉄瓶はとても硬い反面、衝撃に弱く、強くぶつけたり落としたりすると割れてしまう恐れがあります。また、「空焚き」や、熱せられた砂鉄鉄瓶に冷たい水を入れるなど「急激な温度変化」を加えた場合にも割れてしまう事があります。砂鉄の鉄瓶は通常の鉄瓶と違って、割れると修理ができないので注意が必要です。また、IH調理器には不向きなものもあります。

お勧めの砂鉄鉄瓶紹介

骨董鉄瓶

骨董鉄瓶につきましては、非常に多くの紛い物が出回っているので注意が必要です。意図的に偽っているもの、販売者の知識不足によるもの等様々ですが、余程専門的知識がないと本物を見分けるのは難しいかと思います。

見分け方の参考の一つとしては価格が挙げられるかと思います。稀に掘り出し物がある事もあるので一概には言えませんが、有名な作者の作品等はやはり貴重品ですので高価な場合が多いです。※作者、作られた年代、形状、商品状態、共箱の有無などによって価格は異なります。

共箱とは、商品を納める箱のことで美術品の場合は桐箱のことが多いです。本来商品を守る為のものですが、製作者の名前や作品名が書かれており、印が押されている場合が大半なので、証明書的な意味を持っており、共箱自体が大きな価値を持っています。共箱の有無で商品価値は大きく変わり、価格が数倍の差が出ることも珍しくありません。但し、中身の商品と共箱が異なる場合があるので注意が必要です。骨董品などは長い年月を経ている為、途中で中身や箱が入れ替わってしまったり、意図的に異なる商品と組み合わせて販売されていたりする場合もあるので、専門的な知識がないとなかなか見分けることは困難です。

他に見分け方の目安としては、商品や箱に作者名が入っているという事が挙げられます。(商品の場合、蓋裏等に入っている場合が多いです)但し、作者名は後から入れることも出来ますし、本物であっても、鉄瓶と違う蓋が合わせてあったり、違う箱に入っていたりする場合があるので注意が必要です。長い年月を経ているものなので、必ずしも製作された当時の姿で一式揃っているとは限らないのです。これらの事については、作者の作風やどの年代にどのような作品を作っていたかなどを熟知していればある程度の見当はつくのですが、やはり専門的な知識が必要となるので、やはり見分けるのは困難です。

極書(きわめがき)があるものについては本物である信憑性が高いと言えます。極書とはいわば鑑定書のようなもので、箱に書いてある場合、札などに書いてある場合など、様々な形式があります。

オークションの注意点

鉄瓶(主に骨董品)を購入する手段の一つとしてオークションを利用される方もいらっしゃると思いますので、オークションについての注意点を参考までに述べさせて頂きます。

あくまでも個人的主観ですが、オークションは曖昧な商品が非常に多く(意図的に偽っているもの、販売者の知識不足によるもの等)特に財産的価値を目的として購入する場合には十分な注意が必要です。

商品画像について
・遠くから撮ったものだけで接写画像がない。
・焦点がぼやけていたり暗く撮影されている。
・画像に修正や加工した形跡がある。

これらにあてはまるものは、商品を意図的に分かりづらくしている可能性があるので注意が必要です。

出品者評価、商品説明について
・評価が悪い。
・「知識不足の為わかりかねます」等の文章が記載されている。

評価の良し悪しは重要な判断基準となりますので必ずチェックし、評価内容の詳細も確認する事をお勧めします。

「知識不足の為わかりかねます」等の文章記載につきましては、正直に表示されているので決して悪い出品者ではありませんが、出品者自体が商品の事をよくわからず出品している物ですので、購入者側が画像等を見て判断するしかありません。

価格について
・安すぎるもの
・入札価格が1円スタートになっているもの

最近のオークションの傾向から見て、鉄瓶、銀瓶といった嗜好品は、価格が競り上がる事は少なく、開始価格で落札される事が多いように思います。出品者も出来るだけ損をしないよう価格の設定を行うので、販売開始価格が安すぎる商品は、商品価値自体が低い可能性があると考えられます。これは1円から始まるオークションについても同じことが言えます。

※例外はあります。
・出品者がオークションに慣れておらず、競り上がりを期待して販売開始価格を低価格に設定してしまう。

・出品者が商品の価値を知らずに出品している。例えば蔵から出てきた鉄瓶や銀瓶を邪魔なので、いくらでもいいので売りさばきたいといったケース。

また、骨董品の場合、商品のコンディションが悪い物などについては年代物であっても低価格で出品されている事もあるので、修理等をすればお宝に化ける事もあるかもしれません。

鉄瓶お悩み相談(錆び、水漏れ、その他)

錆が出てしまったら
鉄は水に触れると錆びてしまいますので、使用後は必ずしっかりと水気を取らなければなりません。ただ、どんなに丁寧に扱っていても赤い斑点のような錆等が出てきたりしますが、鉄は本来錆びるものですので、多少錆が出てきてもそのまま使い続けても問題はありません。※錆が気になる場合は後述の煎茶を使用した方法をお試しください。

お湯が赤く濁ったり、錆びの味がする場合はお手入れが必要です。この際に間違っても鉄瓶の内側をゴシゴシ擦ったりはしないでください。鉄瓶には「金気止め」と呼ばれる表面に酸化被膜をはる錆止め処理が施されていますが、ゴシゴシ擦ると、この膜が剥がれてしまったり、傷がついてしまい余計に状態が悪化する原因になってしまいます。

ちなみに、赤いお湯を飲んでしまったとしても体に害はなく、昔からの鉄器職人さんは平気で飲まれたりするそうです。ただ、見た目が気になってしまいますし、味には影響してしまうので、お湯が赤く濁ったらお手入れする事をお勧めします。

錆が出てしまった場合の対処法(内側)
お湯が透明になるまで繰り返しお湯を沸かしてください。数回繰り返すと透明なお湯に変わり、錆びの味がしなくなってくると思います。

上記の方法を試しても、どうしてもお湯が赤く濁ってしまう、錆臭いといった場合には、タワシ等で内部をやさしく擦り、錆を落とした後、水でよくすすいでください。(※金属タワシは使用しないでください。)煎茶を不織布に入れ(ティーパックの煎茶でもOK)鉄瓶に入れお湯を沸かして20分ほど煮出した後、火を止めて7~8時間放置してください。

しばらく放置すると中の水が真っ黒になってくると思います。これは鉄分とお茶のタンニンが反応したもので、黒い皮膜が錆を抑える働きをしてくれます。黒くなった水を捨てて、また煮出して捨てるといった工程を3回ほど繰り返したら、軽くすすいで1~2回お湯を沸かしてからお使いください。大抵はこれで赤さびが止まり、お湯が透明になりますが、それでもお湯が赤茶色になってしまう場合は修理が必要です。

錆が出てしまった場合の対処法(外側)
鉄瓶の外側に錆が出てしまった場合は、煎茶を浸し絞った布で表面を軽く叩くように拭いてください。(※鉄瓶に余熱のある内に行ってください。鉄瓶が冷えている時にやると逆に錆びる原因になるのでご注意ください。)

空焚きしてしまったら
空焚きは危険な上、鉄瓶に大きなダメージを与えてしまうので十分にご注意ください。もし空焚きしてしまった場合は、そのまま自然に鉄瓶が冷めるのをお待ちください。慌てて水をかけたりして急速に鉄瓶を冷やすと、高温の水蒸気で火傷をする危険性があり、また、急激な温度差によって鉄瓶が割れてしまう恐れもあります。

空焚きしてしまった鉄瓶は皮膜や塗料が剥がれ、赤錆色になってしまったりしますが、程度によっては修復する場合もありますので、上記の錆びと同じ煎茶を使用した対処法をお試しになられてみてください。それでも改善されない場合や水漏れがするといった際には修理が必要です。

水漏れしてしまったら
じんわり染み出る程度の水漏れは、お粥を煮込むことによって改善される場合があります。お粥を煮た後、冷ましてゆすいでからよく乾かしてください。明らかに穴が見て取れたり、ポタポタと目に見えて分かるような重度の水漏れの場合は、修理が必要となってきます。

内側に白いカビのようなものが出てきたけど大丈夫?
鉄瓶を使用していくと、鉄瓶の内側に白い沈殿物が付着し始めますが、これはカビではなく、湯垢と呼ばれるとても大事なものですので決して洗い落としたりしないようにしてください。この湯垢こそが鉄瓶を錆びにくくし、また、沸かしたお湯が美味しくなる秘訣なのです。

鉄瓶の内側に白く塗ってあるものは何?
新品の鉄瓶の中には、内側が白く塗られているものがありますが、これは炭酸カルシウムで、錆止めに焼き付けられている漆の匂いを消すために塗られているものです。人体には無害なので、水洗いをすればそのままご使用頂けます。たわし等でゴシゴシ洗ってしまうと、漆まで剥がれてしまい、傷や錆びの原因になってしまうのでご注意ください。お湯を沸かすと濁る場合があるかもしれませんが、数回お湯を沸かして頂くと濁らなくなります。

お湯に黒い粒(カス)のような物が混じっているのですが大丈夫?
鉄瓶でお湯を沸かすと稀に黒い粒(カス)のような物が混じる事がありますが、これは、鉄瓶を製造する工程で、高温で鉄瓶を焼く事により酸化皮膜(黒錆び)を作り鉄瓶を錆びにくくする金気止めという処理を行うのですが、その酸化皮膜(黒錆び)が剥がれたものと考えられます。もう一つ考えられるとすれば、鉄瓶を仕上げる際に水漏れ等があった場合、漆などで修繕をしますが、それが剥がれてきたという可能性もあります。いずれの場合も、お湯を沸かしていくうちに無くなってくると思われ、また、天然素材ですので万が一飲み込んだとしても身体には害はありませんのでご安心ください。

お湯を沸かす際にどれくらい水を入れればいい?
8分目程度を目安に水を入れてください。目一杯に入れてしまうとお湯が沸いた際に吹きこぼれる恐れがあり危険ですのでご注意ください。

鉄瓶の修理について

鉄瓶は丈夫に出来ており、使用方法やお手入れ方法さえ間違えなければ長く使用する事が可能です。また、多少の錆等については修復する事ができますが、状態が酷い場合には専門的な修理が必要となる場合があります。

錆びや空焚きの修理
錆びや空焚きの修理は、錆をきれいに落とし高温で焼き、鉄の表面に酸化被膜をつくって錆びにくくする「焼抜き」という処理を施した後、色を付け直して修理します。

水漏れの修理
水漏れの修理は、小さな穴が原因の場合は、金漆と呼ばれる鉄分と漆を練り合わせたものを塗り詰めて穴を塞ぎます。

骨董鉄瓶などは鉄の内部が腐食してしまっていたり、底が薄くなってしまっていたりする場合があります。そういったものは簡単に直すことが出来ませんが、鉄瓶の下半分を切り落とし、新たに下半分を造り直し、上部と組み合わせるといった方法で修理が可能です。

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